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グランドセイコー エレガンスコレクション「スリム」手巻きムーブメント限定エディション






 蒔絵による文字盤の赤い漆塗りモデルは、間近で見ると極めて巧みなつくりだ。漆塗りには光の加減で見え隠れする細かなスジ模様が入っていて、それが細部に埋もれることなく文字盤に驚くべき深みと複雑さを与えており、また、漆塗りの特徴である光の当たり方による色の変化も見られる。蒔絵によるアラビア数字と目盛りも似通った印象で、それらの質感にはわずかに生命感が感じられる。エルメス時計 メンズ黒と赤の漆塗りモデルのどちらも、冴え冴えと完ぺきに磨かれた針とケースとの鮮やかな対比をなす文字盤の向こうに、何かしら生命を宿している感じがするのだ。

 2mmというケースの厚みの違いは数字の上では大した違いとは思えないが、時計愛好家であれば、それが腕に着けたときに格段の違いを生み出すことを知っている。この新しい「スリム」モデルはもちろんエクストラフラット ウォッチではなく(クレドールの中にはエクストラフラットのムーブメントがいくつかあるが)、私の知る限り、それがグランドセイコーに組み込まれたことはなく、全部ではないにしてもほとんどが日本の国内市場向けのものとなっている。しかしながら、この新しいモデルは分厚いグランドセイコーモデルとは顕著に異なる着け心地を実現している。この「スリム」モデルのガラス部分は大きく盛り上がったドーム型であるため、その着け心地には数字上のサイズ以上に大きな差がある。

 私が着用したことのある唯一の手巻きムーブメント搭載のグランドセイコーはSBGW231で、これは複雑機構も日付表示もない直径37mm、厚さ11.6mmの時計である。この時計の厚みは今回の「スリム」限定エディションと同じだが、今回のモデルのほうがいくぶん腕にしっくりと馴染む(これはおそらく縦横比の違いによるものだろう)。

 全体としては、これらの4つのモデルは従来のグランドセイコーからすると、とても斬新でかなり特色のある最新版だといえる。グランドセイコーの大きな魅力を成す特有の日本的精神を損なうことなく、より世界に通じる趣を感じさせるものとなっている。